愛する人にタバコをやめて欲しいあなたへ! 小説 これが禁煙の辛さだ!! その12

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※この文章はその1からの続きになっています。
もし読んでいない方はこちらからお読みください!!
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俺はプールの水に浮いていた。地球の水より質量が重いらしく、ことのほか体が浮く。そのように調整されているのかも知れないが。

ボブは少し離れたプールサイドで仰向けにぶっ倒れている。ここから見るとトドが寝てるみたいだ。

久しぶりに殴り合いの喧嘩をした時、俺は最後に良いパンチを頂いてプールに落ちた、ボブはそれを見届けた後、そのままその場にすっ転がった。俺も起き上がる気にもなれず、その場から動かなかった。

ボブは愉快そうに大声で笑い出した。俺もつられて笑う。確かに良い運動をしたような爽やかさがある。頭はガンガンするが。

その後、またプールで会う約束をしてボブとは別れた。まあサイコーに変な奴だが根はいい奴だな。しかし、一人になるとまた忘れてた飢えが俺の心を蝕み出す。いくらいい気分転換が出来たとはいえ、やはりこの苦しさまでは紛らわす事も出来ず、それがいつまで続くか分からないが故の苛立ちを覚える。もしかしたら一生死ぬまでこうなのではと思えるくらいだ。

しばらくして俺は部屋に戻った。ベッドの上で静かに暮れていくこの星の夕焼けを眺めていた。今日はひと暴れしたせいか、昨日とは違って幾ばくかはスッキリしていた。

今俺の近くには、柄の部分が歯型でボロボロに砕けたペンが転がっている。気分転換にと思ってガリガリやっていたが、逆に余計なイライラが増してしまってそのまま噛み砕いてしまったものだ。

俺はボブの言った事を反芻した。確かに代価品を探して今の考え方の延長線上にいるのではなく、新しい考え方の感覚を磨いた方が良い。確かにそうしないといつまでたっても「この星の人」にはなれない。

しばらくして、ディーラーと連絡をとった。定期的な連絡なので不便はないか聞かれ、別にと答えるのが定例になっていたが、今日は進展があった。納品日が決まったのだ。ちょうど20日後、だいぶ企業努力してくれたという事になる。

何だかんだ言ってもやはりゴールが決まると安心する。そこまで頑張ればいいのだ。俺の心情を察してか良かったですねと声を掛けてくれた。

通信を切ったあと、すぐ乾杯をしたくなるがその気持ちを打ち消す。本当に事あるごとに飲み食いしようとする気持ちが出てくる。これは全部のパターンが出てくるまでひとつづつ克服していくしかないな。

俺はボブが言った「呪縛」という言葉を思い出した。確かに切っても切れないという意味では、俺らみんな生まれた時から逃れられない欲求という魔物に呪われているのかもな。確かにそれらにコントロールされるのは最悪だ。こちらがコントロールする側に回らなければ。

とはいえ、食欲というのは本当に途方もない。初めてちゃんと対峙するが、底が見えない。どれだけ深く覗き込んでも突き抜けられるのかどうかも見えない。しかし、何とか乗りこなしてみせるさ。

俺は目を閉じた。今日はゆっくり眠れそうだ。

……

次回がラスト!! 続きはこちらのページから


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