愛する人にタバコをやめて欲しいあなたへ! 小説 これが禁煙の辛さだ!! その10

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※この文章はその1からの続きになっています。
もし読んでいない方はこちらからお読みください!!
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昨日の話とは地球の歴史の話である。どうやらボブは地球人のもつダイナミズムや荒っぽさがことの他気に入ったらしい。次に生まれ変わるなら地球がいいと言い出す始末だ。俺はやめておいた方がいいと釘を刺した。

この星と地球の違いを見つけるのが、ボブの中ではかなり楽しいらしい。農業や畜産の話などは身振りを交えて真似てみたり、また戦争の話をしたら、一人で戦争ごっこを長時間もあきずに楽しんでいた。

ただ、やはりそう言う意味でも食事のことについても詳しく言及される。こちらとしては話せば話すほど思い出してしまうので、正直俺はこの話はしたくないんだが。

その文句を付ける度に、過去のお前の話だろ、とボブは俺をまあまあと一々宥める。確かに俺が話していることは過去だが、現実に苦しんでいるのはほかでもない、今だ。

「おめぇよお、そんな事だといつまでたってもこの星の人になれねぇぞ」

それを伝えると、ボブは笑って何度も聞いたお決まりのセリフを言う。どうやらこの星の人の意思決定のスピードは、とてつもなく速いらしい。しかも、過去を引きずり続けない。最初はいわゆる国民性の話かと思ったんだがどうやら違う。どちらかというと、テレパシーを意思疎通言語として進化した彼らの当然の帰結だった。

どういうことかというと、思考そのものが伝播するがゆえに、それが良いのか悪いのかの判断が付きやすく、また一瞬で広範囲に広がるため最速でその思考が適応されるためである。つまり、今日の常識が明日の非常識しという言葉が、本当に文字通りになることもあるのだ。

「そんな事言ってもよぉ、俺ぁ、おめぇらとは違ぇしよぉ」

俺はボブの口振りを真似して答えた。完全に皮肉のつもりだったが、それを見てボブは大笑いをする。挙句、気に入ったのか同じように真似して遊びだした。くそ、勝てる気がしねえ。

凄くいいところばかりの言語体系に思えるが、ボブにしてみたらそうは思わないらしく、逆に地球圏のような、言葉によるコミュニケーションのほうがよほどダイナミズムを感じるという。最初はお世辞かと思ったがこれもまた違った。

テレパシーによる会話は、確かに便利だがいわゆる意思疎通の制限が無いため、この地域人の意識が明確に分かる。さらにそれを超えてこの星の人の意識、さらには、この星の意識、さすがにここからは微かになるが銀河の意識まで把握出来てしまうと言うのだ。そうするとどういう事が起きるかというと、この星の人々の行く末、はたまた、この星の行く末がある程度手に取る様にわかるらしい。

結果、ボブの中では筋書きのあるドラマを観ているような気分になっていてつまらないらしい。その点地球には、意思の疎通が難しい人同士の葛藤や、破壊と創造の歴史には余談を許さない緊迫感とダイナミックさがあって、それが楽しいということだ。

ボブが言うにはテレパシーを言語機能としてもつ種は殆ど同じような末路を辿るらしい。黎明期は他の種と比較して爆速とも言える進化と繁殖を見せるが、文明が一定程度成熟すると、それまでうねるように流動していた、エネルギーの動きが規則に則って動くようになり、やがて緩やかに消滅するかの如く、消えるというのだ。

実は、もう既にこの星にもその兆候が出ているらしく、種の絶滅も時間の問題だという。

俺は、革命を起こしてでも生きたい奴や逃げ出す奴もいるだろうと聞くと、そうでもないらしい。俺には到底考えられない事だが、為政者も市民もみんな納得してそのまま滅びるのを選択するという。

「まあ、俺は違うがね」

ボブはニヤリと笑った。確かにエントロピーの法則からすると安定したエネルギー下では運動は起きなくなる。だから皆満足した場所に最終的に行き着くのかも知れない。しかし、ボブ自身はこの先の種の変化や進化を起こしてみたいようだ。

まぁ俺は、この星に残る最後の革命家だよ。ボブはそう答えた。色々とふざけた奴ではあるが、恐らくボブの個体の本質はそこにあるんだろう。固定化された質量を動かすには、それ相応の莫大なエネルギーがいる。そんなわけで今は事業をしつつ、エネルギーを貯めている最中のようだ。

まあ、革命に成功したら地球に来いよ、美味いビーフステーキの店に案内してやる。

俺がそういうとボブは笑って、そりゃあいいと笑って答える。だが、すぐに真面目な顔になり俺に問いかけた。

「おめぇよお、口から食べる事が今後出来なくなるのが耐え難い苦痛だと思ってるだろうが、そりゃ違う、まるで逆だぜ?」

逆? それはどういう事だ…

……

続きます!! 続きはこちらのページから


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