愛する人にタバコをやめて欲しいあなたへ! 小説 これが禁煙の辛さだ!! その8

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※この文章はその1からの続きになっています。
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その日は一日中、俺は何かアクションをする度に何かを口に入れたくなる衝動にかられ、その度に理性で抑えるという事を数え切れない程繰り返した。

例えば、午前中、水際でこの星のコンテンツを見ていた。しかし、事あるごとに飲み物を探している自分がいた。一通り探して、もう飲めないんだったと思い直すが、結局同じ事を繰り返してしまう。

これでは埒があかない。

午後は何か口に含むものが、食事ではなくてもガムなどの嗜好品としてあるのではないかと思い、大きな雑貨屋さんを教えてもらい、そこを訪ねた。

店員さんに色々聞いて見たが、シャボン玉のストローのような所謂口に含んで遊ぶものは存在したが、感触を楽しむものはなかった。仕方ないので道端の草木でも噛もうかとも思ったが、それじゃ、この星の人になるのは程遠いと考えやめた。

晩の「食事」は、ホテルで朝食のときと同じようにして頂こうとするが、どうしても好物のビーフステーキが頭をよぎり、集中できない。結局、15分もしないうちに頂くことを諦め、部屋に戻ることにする。

くそ! これじゃ全然駄目だ。俺はベッドに横たわった。

今日は精神的にきた。存在が無くなるかもしれない恐怖と、食事が出来ない苦痛と、エネルギーを得る仕方が分からないもどかしさで、頭がおかしくなりそうなくらい疲労している。

この状態で1ヶ月半か、気が狂いそうになるな。

そう深刻に考える間にも大好物を食べる絵が思い浮かぶ。これを消すのは相当難しいのかもしれない。俺はため息をついた。

それでも一つ救いな事がある。それは、飲み食いしなくても生死に関わるような飢えを現時点では感じない事だ。そういう意味ではこちらの構造ルールには完璧とは程遠いまでも、有る程度は認識されているのかも知れない。

それが分かっただけでも、かなりの収穫か。

昨日は一生…と、息巻いていたが、取り敢えず一ヶ月半、今日という日を繰り返していけばゴールに到着するんだ。ゴールを迎えればまた息子と楽しく暮らせるんだ。と、いきなり弱気になった自分を慰める。

とにかく、やり切った時のご褒美が欲しい。そうでないとやってられない。

今日一日中、体の一部が欠けてなくなったかのような喪失感がある。俺にとって食事がどれだけ心のウエイトを占めているかがはっきりと分かった。

本当弱っているな、俺。あまりの先の長さに途方に暮れながら、ひとりつぶやく。

異形の地で、その星の人には誰にも分からない悩みを抱えていた。

……

続きます!! 続きはこちらのページから


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