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※この文章はその1からの続きになっています。
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翌日、俺は起きると一目散に鏡の前に行き、体を確かめた。良かった、まだ俺の体は無事なようだ。俺は朝の身だしなみを整えると、ひとまずディーラーと話をした。俺の現地の名前の名付け親になって欲しかったからだ。…もちろん、他にも聞きたい事があったが。
ディーラーは俺の質問に怪訝そうなイメージを返す。そりゃそうだろう、早朝に何事かと思ったら、俺の名前をつけてくれときたもんだ。そうならないほうがおかしい。
とりあえずここでの個体の識別は、地域とその人の特徴で表すらしい。例えるなら「3丁目のパン屋さんのせがれ」みたいな感じだ。名前は、ここではあまり意味をもたないらしい。
ディーラーが出身の星のイメージを伝えてくれという。地球のイメージを伝えると、俺の名前は「青の星から来た旅人」という意味合いがいいんじゃないかという。
俺も雰囲気が気に入ったので、そう名乗ることにする。後は、この星の人がする慣習を徹底的に真似するために、朝から晩まで事細かに聞いた。
ちなみに宗教はあるのかと聞いたが、それは一応あるらしい。時おり啓示が来るそうだ。詳しく聞くと、何かしろとか、してはいけないなどの戒律があるわけではなく、大分緩いようだ。
もちろん敬ってはいるが、どちらかというと神(?)も人も双方対等で、時おりくる啓示も、いわゆる「神社で引くおみくじ」と同じような感覚のものらしい。
地球とは全然違うな。テレパシーで会話するが故に嘘がつけないからだろうか?地球の現状を伝えると、ここも昔はそうだったみたいだと笑って答えてくれた。
どうやら、慣習じたいはそれ以外はあまり変わりないということが分かって安心する。…まあ、食が一番の問題ではあるのは確かなんだが。
要らないと思ったので、食事のサービスについては付けなくて言いと答えてたが、今は欲しい。ついでにそれを打診する。すると料金はツケといてくれれば大丈夫だという旨の返事を貰えた。
ありがたいな…。
俺はディーラーとの回線を切り、朝の「食事」に出かける。昨日はどうせ俺には分からない、と、はなからあきらめていたが、今日からはそれが俺のエネルギー源になるのだ。真剣に向き合わなければならない。
席につき、ウェイターにここで一番のオススメをお願いした。ついでにどんな味わいかを教えてもらう。もちろん、食べたことのない人にもわかるような説明でだ。
これを食べた事ないのかと驚かれたが、ウェイターの説明が上手く、かなりそれを頂いた時のイメージを読み解く事が出来た。
文字にすると「コクがあってまろやか」という表現がぴったりなんだが、カレーとかとは全然違う、中々言葉で伝え難い感じだ。
しばらくして、料理が運ばれてきた。俺は周りの人に習って、運ばれた料理を「食べる」ことにした。
辺りを見渡すと、料理を挟んで談笑しているカップルらしい2人や、目を閉じて指で机をリズムよくたたきながら楽しんでいる人など様々だ。
ディーラーには、さっきどうやって食べるのかというコツも聞いていた。物心ついた時からやっている事にコツと言われても…という感じではあったが、エネルギーを頂きたい対象のエネルギーをそこにあるのを感じ、それをそのまま自身の体に移動させるようなイメージらしい。
触った方が感度が上がるようなので、両手でお皿に触れながら目を閉じた。なんとなくだが、柔らかい感じのエネルギーが自分に入っていくような感じがする。しかし、これで本当に正しいのかが判断つかない。自分の脳が勝手に作り出したイメージなのかもしれない。
自分の思考か、そうでないのかの判断は本当に難しい。焦るとよけいに頭の思考に左右されてしまうので、出来なくて当然だ、と思い直し、リラックスして再度挑戦する。
1時間くらい試しただろうか? 結局、俺にはこれで正しいのかの判断は出来ないままだった。まあ、正しいときははっきりと分かるはずなので、今のところはまだ食事をするにいたってないのだろう。アプローチをかえて色々試すしかない。
…しかし、のどが乾く。俺は朝は1杯の水を飲む習慣がある、しかし今日からは、その水すらも飲めないのだ。
外をみやると、赤い長方形の物の前で人が何か操作しているのがうっすらと見える。まるで、その光景は自動販売機でドリンクを買っているようだった。
俺は、気がついたらそこに向かって走っていた。その行動はほぼ無意識的に行っていたと思う。なぜなら、近づいて俺の想像するものではないと判断しがっかりするまで、正直どうやってそこまで行ったかの記憶がないからである。
それは、何かの操作端末だった。おそらくATMかチケット販売のたぐいのものだろう。目の前の男は流暢な手つきで操作し、何かの合図をみやった後に立ち去っていった。
ふと我に返り愕然とする。心の声ははっきりとこういっていた。ここでドリンクを買って飲めたらどんなに楽だろうか…と。
コインを片手に握りしめながら、しばらくそこに立ち尽くした。
……
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