愛する人にタバコをやめて欲しいあなたへ! 小説 これが禁煙の辛さだ!! その6

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※この文章はその1からの続きになっています。
もし読んでいない方はこちらからお読みください!!
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実は、さっきの話には続きがある。さっきの話では元の構造ルールが働く領域の認識から外れた俺みたいな存在が、現在の構造ルールで完全なデータとして認識されず、また、元の構造ルールの認識から外れてガベージコレクション(ゴミ回収)の対象になったとき、俺自身の存在は消滅するという所までだった。

しかし、俺が環境下で変化(進化)し、現在の構造ルール下で正常に認識されればどうか?

答えはもちろん、正常に認識され続ける限りは俺という存在は保証される。問題はどうやって正常に認識されればいいか、だが、それには俺にもできうる一つの答えがある。

それは、名前と食を、その構造ルールに合わせる事だ。

俺は、ガキの頃見たレトロ映画の千と千尋の神隠しを思い出した。確かあいつも妖怪の村に迷い込んで、名前変えられ、現地の食べ物を食べさせられて、そこにいることを許可されたんだっけか。

しかし、彼女はまだいい。環境が変わっても食事が出来たんだから。俺が食を合わせるという事は、霞を食べて生活しろと言われているのと同義だからだ。

しかも、その選択は一生食べ物を食べられないことを意味していた。あの美味しいステーキもハンバーグも、そして何より大好きなコーヒーや紅茶も口に入れることは出来ないのである。

食事をやめる。口にするのは簡単だが、俺にはその状態が到底想像もつかなかった。気を食べろだと? 仙人じゃあるまいに。

しかし、早急に決断しなければならない。今、食事をこちらの側に切り替えるのか、はたまた今の食料をそのまま食べ続けるか?

生存確率でいえば食事を辞めなければならない。だが…。やめたからといえ、1ヶ月後に生き残っている確証はない。

不意に、出発する前に景気づけに食べた豪華料理を思い出した。俺は、長旅になる前に必ずその土地の豪華な食べ物にありつく。

それが、もう…食べられないのか。

本当に? 本当なのか? あまりに非現実的すぎて思考が回らない。決断するにしても、あまりに失うものが多すぎる気がする。俺が幸せと感じる時の殆どが食事を食べているときだといっても過言ではないのだ。

しばらく考えを巡らせていたが、いつの間にか、どのように意識すれば食事をしてても大丈夫かという思考になっている事に気付いた。その思考は、誰かにあなたは食べてても良いのよ。という慰めを欲しているかのようだった。

駄目だ、そうじゃない! 俺は手に握りしめている息子の写真を眺めた。

俺がすべき決断は、生きてここを出ること、そのために生存する確率を最大限まであげること。その方法で一番有効なのは、ここで一生食事をしない。という選択をすることなのだ。

俺は生きて戻る。やってやるさ。

自然と歯に力が入る、負けてなるものか! 今まで色々な困難や恐怖を乗り越えてきたが、今回が一番手強いと感じた。何故ならば、敵は他でもない己自身。しかも、ヒトの生存にダイレクトに関わる欲求との闘いだ。しかもその闘いには終わりがないように思える。しかも勝てるかどうかも分からない。

俺はすぐさま食料を、ひとまとめにして近くのひと気のない所でまとめて燃やした。水は景気づけに頭から一回被り、その後全て火を消すついでに辺りにばら撒いた。

よし、これで退路は絶った。あとはもうやるしかない! とにかく明日からは、誰が何と言おうが俺はこの星のヒトだ。この星のヒトのように起き、同じように語らい、そして同じように「食事」をするのだ。

愛した妻と、その愛する息子のためにも。

今日、俺は新たなる1歩を踏み出した。

しかし、それは想像を絶する苦難の幕開けでもあった。

……

続きます!! 続きはこちらのページから


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